数理科学専攻について
数理科学専攻の教育目的
数学及び数理科学の領域において,知識基盤社会を多様に支える高度で知的な素養のある人材を養成すること。
数理科学専攻の教育目標
数理科学専攻の教育目標は,主として大学の専門課程等で数学を学んだ者に対し,さらに進んだ数学の理論,応用についての教育を行うことにより,論理的思考力,問題解決能力,正確な表現力及びコミュニケーション能力を身につけさせ,即戦力として活動できる高度な専門的知識・能力を持つ教育者,技術者,研究者の育成を行うことである。
開講科目の設置趣旨
数理科学専攻の教育目標に従い,数理科学専攻の教育課程は「専門必修科目」,「専門選択科目」と「研究科共通科目」により構成されている。数学の基本的な考え及び論理的厳密性を修得するために専門必修科目:代数学特論I,幾何学特論I,解析学特論Iを学習する。社会の多様なニーズに応え,数学の応用力を身につけるため,研究科共通科目を修得する。数学の各分野における理解を深めるため,専門選択科目を修得する。数理科学専攻は大きく分けて,代数学・幾何学・解析学の3つの伝統的な大枠を堅持して基礎的な教育姿勢を貫いている。しかしこれらの専攻分野は数学それ自身のなかにあるセンスの違いのようなものからくるもので,それぞれ独立しているわけではない。むしろお互いに垣根なく協力しあっている。
代数学分野では,学部教育及び他分野との関連を重視し,学部授業で行った群論について学び直すと共に,変換群,基本群など幾何学・解析学分野で現れる重要な群の例を学んで,数学の一体感を強める。学部教育で行った環論の基礎をさらに発展させ,多項式環や代数体の整数環など代数幾何・整数論で重要な環の例を学び,現代代数学の基本的な考えを修得する。体論の基礎,特に現代の暗号・符号理論で重要な有限体について習熟すると共に,近代代数学の主要な成果であるガロア理論と方程式論,作図問題への応用までを学び,豊富な例に基づいた群,環,体論の包括的な理解を深める。
幾何学分野では学部教育及び他分野との関連を重視し,学部授業で行った曲線論と曲面論について学び直すと共に,多様体・位相幾何学的に分類するため,基本群やホモロジー群及びそれらの具体的な計算方法を学んで,多様体(曲面)を分類する。更に結び目,写像類群及び4次元多様体等の低次元トポロジーの基本的な理論を修得する。多様体の計量を重点とする微分幾何学を展開するために,測地線,曲率等リーマン多様体の基本的な知識を習熟する。更に空間形内の部分多様体に関する基礎知識及びリーマン多様体における固有値問題の基礎知識を学び,微分幾何学の基本的な考えを修得する。
解析学分野では,学部教育及び他分野との関連を重視し,学部授業で行ったルベーグ積分論,複素関数論,微分方程式論について学び直すと共に,確率空間を舞台に確率論を展開するために,測度論から始め,確率過程論,確率微分方程式論を学び,数理ファイナンス及び複雑現象の数理モデルへの応用のための確率解析学の基本的な考えを学ぶ。楕円型,放物型,双曲型線形偏微分方程式の例から基礎となる解析学的手法を学び,関数空間論,関数解析学論を習得し,数理物理に現れるモデル及び非線形現象への応用のための偏微分方程式論の基本的な考えを学ぶ。
広く社会で即戦力として活動できるために,特別研究の勉強を通して,直面する諸問題を正確に理解し解析する力とプレゼンテーション能力を身につけ,更に自ら研究計画を立て,継続的に仕事を進めて纏める能力を身につける。
学位授与の方針
教育目標に照らして,学生が身につけるべき以下の具体的学習成果の達成を学位授与の方針とする。所定の単位を修得するとともに修士論文を提出した者に対して修了判定を行い,工学系研究科教務委員会及び教授会の議を経て,学長が修了を認定し,学位を授与する。
- 大学の専門課程等で数学を学んだ上に,さらに進んだ論理的思考力,問題解決能力,正確な表現力及びコミュニケーション能力を身につけている。
- 数学に関連した様々な問題について関心・理解を持ち, 論理的厳密な思考に基づいて問題解決に取り組む能力を身につけている。
- 数学の各分野における問題を理解し, それらを解決するための論理を修得し, 直面する諸問題を正確に理解し解析する力とプレゼンテーション能力を身につけている。
数理科学専攻へようこそ
大学院は学部レベルを大幅に越えた高度の専門内容を学習修得する場所ですが
必ずしも研究者を育てる場所だけではありません.学部レベルの勉強内容
だけでは満足感を持てなかった人,もう少しだけ学習内容に深いりしてみたい人
にも手ごろな場所です.今日修士号を所持した人を優遇する社会になって
いますので修士号取得を目指す人には大学院は勿論不可欠の場所です.専門内容を
能動的に積極的に好奇心を持って勉強する間に,勉強が病みつきになって研究者に
育っていく人もいます.
そうなれば我々としてはシメシメです.
以下は我々が準備している当面の指導メニューですが,勿論院生の希望があれば
これらのメニュー以外でも応じることが可能です.
- グラースマン多様体とシューベルト計算の理論
- チャウ多様体
- 有理同値等サイクルの代数系の交叉理論
- 代数曲線のモヂュライ理論
- アーベル多様体の解析的理論
- 円分体の整数環の基底及び巾底探査
- 二次体の類数及び類群の階数評価
- ガウスの和をもちいた差集合の構成
- 整数論を用いた新しいラテン方陣の構成
- フェルマ予想の攻略物語(円分体論から楕円曲線、保型関数の整数論まで)
- ソリトン入門(ソリトン方程式のソリトン解、テータ関数解の構成と性質)
- 代数曲線とそのモジュライ空間について(ガウスの楕円曲線論から数論への応用まで)
- 代数幾何学の基礎と符号・暗号理論への応用
- 球面定理の理論
- リーマン多様体の凸体理論
- アレクサンドロフ空間の理論
- 共形リーマン多様体の理論
- リーマン多様体の調和写像理論
- リーマン多様体の極小部分多様体理論
- (擬)ユークリッド空間内の有限型部分多様体理論
- (擬)ユークリッド空間内の2重調和な部分多様体理論
- 閉曲面上の写像類群とその部分群について
- 3次元多様体の幾何学的構造について
- 古典的結び目理論と高次元結び目理論
- 幾何学的無限離散群論
- ガウス過程の標準表現の理論
- 確率過程の予報・補外・補間などの問題
- 無限次元ホワイトノイズ解析
- 統計的推定と情報量
- 非線形発展方程式論
- 偏微分方程式の関数解析的理論
- 数理モデルの適切性
- 非平衡熱力学の数学的モデル
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